ホイールの精度を高めるための専用ツールが自転車のホイール振れ取り台・調整ツール。振れ取り台の選び方や主なメーカーの振れ取り台をまとめました。
シマノのMTB用スプロケットとホイール(フリーボディ)の互換性まとめ
更新日: 2023年3月17日
公開日: 2023年3月16日
最新のMicro Splineと従来のHG splineという新旧規格が混在しているシマノのMTB向けスプロケットとホイール(フリーボディ)の互換性や、購入する際に注意すべきポイントをまとめました。
この記事の目次
スポンサーリンク
シマノのMTB向けスプロケットの互換性は「フリーボディの規格」で決まる
シマノのMTB向けのフリーボディ規格は大きく分けて二つあります。
- Micro Spline(マイクロスプライン)
- HG spline(HGスプライン)
それぞれの違いを知っておけば、シマノのMTB用スプロケットとホイールの互換性を理解することが出来ます。
Micro Spline(マイクロスプライン)
MTB界隈では、ここ数年でより激しい路面状況の変化に対応すべく、「フロントシングル・リア多段」というギアが求められるようになりました。
フロントシングルは、従来のフロントダブル(前2速)やフロントトリプル(前3速)と比較すると、どうしてもギア比の選択肢が狭くなってしまうため、リアの変速段数を増やしつつ、ローとトップの差を広げる必要があります。
かくして、2018年5月のEUROBIKEショーで発表されたのが、MTB向けの最上グレードであるXTRのM9100シリーズ。M9100シリーズで、シマノのMTB向けコンポーネントのリアの段数が、初めて11速から12速へとアップグレードされました。
そして、MTB向け12速で導入されたのが新しい規格である「Micro Spline(マイクロスプライン)」です。
Micro Splineのフリーボディは、従来のHG splineのフリーボディよりも溝が多くなっているため、HG spline向けの従来のMTB向けスプロケットは取り付けが出来ません。同様に、HG splineのフリーハブにMicro Spline向けのスプロケットを取り付けることも出来ません。つまり、完全に互換性がなくなったということです。
現在、シマノのMTB向け12速は全てMicro Spline互換となっているため、シマノのMTB向け12速コンポを使う場合は、Micro Spline対応フリーハブが必須です。
2023年現在、Micro Splineが採用されているのは、シマノのMTB向けスプロケットの12速モデルですので、「MTBの12速スプロケットだけ特殊な互換性」になると覚えておきましょう。
ちなみに、2021年にはロードバイク向けコンポーネントでもリア12速化がされましたが、こちらはMicro Splineが採用されていません。
HG spline(HGスプライン)
MTBに限らず、ロードでも長くシマノのフリーボディ規格として採用されていたのがシマノの高速変速技術「HyperGlide」の頭文字を取ったHG spline(HGスプライン)。MTB向けでは、11速までがHG splineです。
一般的に「シマノフリー」と呼ばれるのは、このHG splineのことでしょう。
HG splineフリーボディは全て溝の数は同じですが、変速数に合わせて高さが異なるため、HG splineフリーボディ規格にもいくつか種類があります。
現行のシマノの公式互換シートでは、
- HG spline M(8・9・10速・MTB11速用フリーボディ)
- HG spline L(ロード11・12速用フリーボディ)
の二つが残っています。
シマノの8・9・10速スプロケットは、一部の10速スプロケットを除いて全てスプロケットの厚みが同じです。(ただし、「一部の10速スプロケット」のみに対応した、HG spline Mとは別の10速専用フリーボディも存在します。)
MTBでは、11速化する際にHG spline Mとの互換性を継続したため、MTB向け11速スプロケットは8・9・10速時代に使っていたHG spline Mフリーボディで使用可能です。
一方で、ロードバイク向けの11速スプロケットは、MTB向け11速とは異なりスプロケットの厚みを増やしたため、HG spline Lフリーボディを採用した11速ホイールが必須となりました。
HG spline Lは溝の設計はそのままでフリーボディの高さが増えただけなので、1.85mmスペーサーを入れることで、HG spline M向けのスプロケットが使用可能です。
その後、MTBは12速化した際にMicro Splineを採用したわけですが、ロードの12速スプロケットについては、従来のHG spline Lと新しいHG spline12速フリーボディの両方に互換する特殊な仕様となっています。
シマノのMTB用スプロケットとホイール(フリーボディ)の互換表
シマノのMTB向けスプロケット、そして新しく発表されたMTBコンポ・CUESのスプロケットが、現行のどのフリーボディと互換するのかを見てみましょう。
変速/フリーボディ | Micro Spline | HG spline M (8・9・10速・MTB11速フリーボディ) |
HG spline L (ロード11・12速フリーボディ) |
---|---|---|---|
MTB 12速 | ◎ | - | - |
MTB 11速 | - | ◎ | ◎(+ 1.85mmスペーサー) |
MTB 10速 | - | ◎ | ◎(+ 1.85mmスペーサー) |
MTB 9速 | - | ◎ | ◎(+ 1.85mmスペーサー) |
MTB 8速 | - | ◎ | ◎(+ 1.85mmスペーサー) |
CUES 11速 | - | ◎ | ◎(+ 1.85mmスペーサー) |
CUES 10速 | - | ◎ | ◎(+ 1.85mmスペーサー) |
CUES 9速 | - | ◎ | ◎(+ 1.85mmスペーサー) |
ロードバイクユーザーからすると、8・9・10速向けのHG spline Mフリーボディは「古いホイールの規格」というイメージがあるかもしれませんが、現行のMTB向けの11速コンポではHG spline Mフリーボディが未だに使われています。
また、2023年3月に発表されたばかりのCUESも、シマノの公式互換チャート上でHG spline Mベースのスプロケットとなっており、HG spline MとHG spline Lのどちらもとも互換性があることが公表されています。また、Micro Splineとは互換性がありません。
サードパーティのMTBスプロケット、MTBホイールを購入する際の注意点
スプロケット、フリーボディ共にシマノのパーツを使う場合は、上記の互換の通りに組み合わせれば良いですが、サードパーティのホイールやスプロケットを使う場合は、上記の互換性と崩れた製品があるため注意が必要です。
シマノには存在しないHG spline互換の12速スプロケット
時折見かけるのがシマノのラインアップには存在しない「HG spline互換のMTB用12速スプロケット」。例えばSRAMのPG-1230やPG-1210がそれにあたります。
もともと、MTB向けの11速は、10速までで使っていたHG spline Mでは足りない高さを「スポーク側にせり出す形で解決している」のですが、通販にあるサードパーティのHG spline互換の12速スプロケットは、「11速スプロケットからさらに1段分スポーク側に迫り出す」ことで、12速を実現しているようです。
そもそも、SRAMのPG-1230やPG-1210は「シマノフリー(HG spline)のホイールで使える、SRAM Eagle12速コンポのための12速スプロケット」なので、SRAMコンポとの使用が前提です。シマノのMTB向け12速と使う際には何かしらの問題が発生する可能性があることを覚えておきましょう。
SRAM以外のサードパーティメーカーの中には、シマノのコンポでも使えるとするHG spline互換の12速スプロケットもありますが、安い製品の中には、変速自体は問題なくてもクランクを逆回しにするとチェーン落ちする現象が発生する製品もあるようです。
そもそも、サードパーティメーカーのスプロケットはシマノの互換外ですので、購入する際はリスクがあることを承知しておきましょう。
どっちのHG spline?
サードパーティのホイールでは、購入時にハブのフリーボディ規格を選択できることがあります。
その際の選択肢は、
- シマノHG(HG spline)/シマノフリー
- シマノMS(Micro Spline)
- SRAM XD
というパターンが多いですが、注意したいのはシマノHGというフリーボディ。
MTB向けのホイールであれば、シマノのMTB向け8・9・10・11速に対応する「HG spline M」だと思われますが、ロード向けやグラベル向けの場合「HG spline L」の可能性が高くなります。
HG spline Lだったとしてもスペーサーを入れれば使えるためそこまで大きな問題ではないですが、念の為購入前に自分のコンポーネントと互換性があるかを問い合わせるようにしましょう。